小机城
Kozukue Castle
小机城は室町時代〜戦国時代(永享年間頃創築か、天正18年〈1590年〉の小田原征伐後に廃城)に築かれた関東の名城。城主は後北条氏(久野北条氏・小机北条氏)/城代は笠原信為に始まる備中笠原氏(The Later Hōjō clan (the Kuno-Hōjō and Kozukue-Hōjō lines); castellans of the Bitchū-Kasahara family, beginning with Kasahara Nobutame)。
概要
概要
小机城は、武蔵国橘樹郡、現在の神奈川県横浜市港北区小机町に築かれた連郭式の平山城である。鶴見川に臨む半島状の丘陵を利用し、曲輪を連ねて土塁と空堀を巡らせた縄張りをもつ。現在の横浜市域に所在した城郭としては最大級の規模を誇り、戦国期には後北条氏の南武蔵における拠点として重要な役割を果たした。
太田道灌の攻略
築城の時期は明らかでないが、永享年間(15世紀前半)に上杉氏によって築かれたとする説がある。史料上、城が明確に姿を現すのは文明10年(1478年)の攻防戦である。長尾景春の乱に際して、扇谷上杉氏の家宰・太田道灌が小机城を攻め、約2か月に及ぶ攻囲の末にこれを落とした。この一戦により、小机城が当時すでに相当の規模と堅固さを備えた城であったことがうかがえる。
後北条氏の南武蔵支配
大永4年(1524年)頃、北条氏綱によって城は修復・再興され、以後、後北条氏の支配下に入る。城主には久野北条氏・小机北条氏といった北条一族が就き、城代には笠原信為をはじめとする備中笠原氏越前守家が代々任じられた。城には「小机衆」と呼ばれる家臣団が編成され、後北条氏の南武蔵支配を支える軍事・行政の拠点となった。天正18年(1590年)の小田原征伐では戦火を交えることなく開城し、徳川家康の関東入府後に廃城となった。
縄張りと遺構
城域には堀切・横堀・空堀・土塁・虎口・土橋・櫓台・帯曲輪といった遺構がよく残る。なかでも最大の見どころは空堀で、深さは10メートルを超える箇所もあり、丘陵を深く断ち切って城内を区画している。曲輪を土塁と空堀で二重に囲い込む構成は、石垣に頼らず土の造成によって防御を組み上げる北条流の築城思想をよく示しており、戦国期関東の城郭を体感できる貴重な遺構群となっている。
近年の発掘調査
横浜市は2023年度・2024年度に小机城跡の発掘調査を実施した。西曲輪北側の空堀では戦国期の堀の壁面が確認され、堀の形状や規模に関する具体的な知見が得られている。また、後北条氏の時代より前と推定される土器片も出土しており、城の成立時期をめぐる議論に新たな材料を提供している。
現状
城跡は「小机城址市民の森」として整備され、竹林と雑木林に覆われた散策路から曲輪や空堀を間近に見ることができる。2006年5月15日には神奈川県の特別緑地保全地区に指定され、緑地としての保全が図られている。史跡指定は受けていないものの、2017年には続日本100名城の125番に選定され、地元では毎年「小机城址まつり」が開かれるなど、地域の歴史資産として親しまれている。
刀剣との関わり
小机城に伝来した刀剣の記録は確認されていない。しかし、この城を南武蔵の拠点とした後北条氏は、日本刀の歴史においても見過ごせない存在である。 後北条氏の本拠であった相模国は、鎌倉時代に正宗を輩出した相州伝の本場であった。室町後期に相州伝が往時の勢いを失ったのち、鎌倉から小田原へ移った刀工の一門が作刀を続け、この系統は「末相州」あるいは「小田原相州」と呼ばれる。その代表が綱広で、初代綱広の「綱」の字は、2代当主・北条氏綱から授かったものと伝えられる。台頭する後北条氏の庇護のもとで小田原の鍛冶は基礎を築き、戦国大名の城下町における作刀の一つの型を示した。2代綱広はのちに徳川家康に召し抱えられ、綱広家は江戸時代を通じて明治期まで作刀を続けている。 小机城は北条氏綱によって修復・再興され、小机衆と呼ばれる家臣団が詰めた城である。城に籠もった武蔵・相模の武士たちが佩いた刀の背景には、小田原を中心とするこうした相州鍛冶の営みがあった。城そのものに名刀の伝来を求めることはできないが、後北条氏の版図に組み込まれた城として、小机城は相州伝の後身が育まれた同じ政治圏に属していた。
見どころ
- 深さ10メートルを超える空堀 — 丘陵を断ち切る北条流築城の白眉
- 二重の土塁と曲輪 — 石垣に頼らず土で組み上げた戦国期関東の縄張り
- 小机城址市民の森 — 竹林と雑木林の散策路から遺構を間近に見学できる
- 続日本100名城 125番 — 2017年選定、史跡指定はないが評価の高い城跡
- 近年の発掘調査 — 西曲輪北側の空堀で戦国期の壁面と古い土器片を確認
※開館時間・入場料は変更される場合があります。訪問前に公式サイトをご確認ください。