※画像はイメージです。久留島陣屋
Kurushima Jin'ya
久留島陣屋は来島通清が豊後森に入封した慶長6年(1601年)頃に陣屋を整備。以後、久留島氏が明治維新まで14代・270年にわたり豊後森藩(1万4千石)を治めたに築かれた九州の名城。城主は来島氏(久留島氏)— 豊後森藩主(来島水軍系)(Kurushima clan (formerly Kōno/Kurushima naval family) — lords of the Bungo Mori domain)。
概要
久留島陣屋(豊後森藩陣屋)は大分県玖珠郡玖珠町の森地区に位置する江戸時代の陣屋跡で、瀬戸内海の来島水軍(くるしますいぐん)を源流とする久留島氏が約270年にわたって治めた豊後森藩(1万4千石)の政庁跡である。「森陣屋(久留島陣屋)」と呼ばれた陣屋と武家屋敷跡群が残り、陣屋跡に造営された庭園は名勝「旧久留島氏庭園」として国の指定を受けており、九州山地の緑に囲まれた静謐な歴史空間として訪問者を迎えている。
来島(くるしま)氏の起源は中世の伊予国(愛媛県)にある。来島氏は河野氏の支族として瀬戸内海・来島海峡(今治市沖)を制した水軍勢力であり、戦国時代には「来島海峡の主」として西国有数の水軍を擁した。特に来島通総(くるしまみちふさ、1561-1597)は豊臣秀吉の文禄・慶長の役(朝鮮出兵)に従軍し、水軍大将として活躍した人物として知られる。しかし関ヶ原の戦い(1600年)で来島氏は西軍(石田三成方)に属したため改易の危機に瀕し、通総の子・来島長親(のち康親)は西軍に属して一度改易となったが、福島正則の取りなしによって所領没収を免れ、豊後国玖珠郡森の1万4千石に移封されて陣屋を構えた。
豊後森藩は小藩(1万4千石)であったため、天守を持つ正式な城郭ではなく「陣屋」(政庁建築)形式の統治拠点を設けた。久留島氏は以後「久留島(くるしま)」を家名として14代・270年にわたり森の地を治め続けた。藩は規模こそ小さいが、歴代藩主に文化人・学者を輩出し(特に久留島通嘉は江戸中期の文人大名として知られる)、藩校「修道館」を設けて学問を奨励した文化的色彩の強い藩政を展開した。
現在の陣屋跡は整備され、陣屋の土塁・石垣・門跡・武家屋敷跡が良好な状態で保存されている。特に陣屋跡に築かれた庭園は名勝「旧久留島氏庭園」として国の指定を受けており、九州では数少ない陣屋形式の武家屋敷群の遺構として学術的価値が高い。隣接して「玖珠町歴史資料館」が設置されており、来島水軍の歴史から豊後森藩の藩政・文化に至る展示を行っている。玖珠町は「伐株山(きりかぶやま)」と呼ばれる独特の台地地形でも知られ、陣屋跡と合わせて豊後の自然・歴史を一体的に楽しめる観光地となっている。
刀剣との関わり
久留島陣屋と日本刀の結びつきは、来島水軍の戦闘文化に根差した刀剣の使用・収集と、豊後国(大分県)の刀剣生産の伝統、そして小藩ながら文化的精彩を放った久留島氏の武家文化から読み解くことができる。 来島(くるしま)水軍の武将たちにとって、刀剣は水上戦闘における最後の接近戦用武器として実戦的意義を持つとともに、武将の格式を示す礼装用の名刀として家伝の宝として伝えられた。瀬戸内の水軍衆は海路を通じて畿内・備前(岡山)・豊後(大分)の名工に刀剣を注文する機会に恵まれており、来島通総ら歴代の水軍将が愛用した刀剣は各地の名工の作品であったと考えられる。文禄・慶長の役(朝鮮出兵)に従軍した来島通総が朝鮮半島で携行した刀剣には、水軍大将としての格式にふさわしい備前・山城系の名刀が含まれていたと推察される。 豊後国(大分県)は古来から「豊後鍛冶(ぶんごかじ)」と称される刀工の産地であり、中世から江戸時代にかけて各地の武将に刀剣を供給した。特に「豊後行平(ゆきひら)」は鎌倉時代を代表する名工の一人として知られ、豊後の刀剣は「行平一派」の系譜として後世の刀工にも影響を与えた。久留島陣屋が置かれた玖珠郡の周辺(日田・玖珠・大野郡)にも鍛冶集落が存在し、藩士向けの刀剣・農工具の双方を手がける地方鍛冶の伝統が息づいていた。 江戸中期の久留島氏は文化的大名として知られ、特に「久留島通嘉(みちよし)」は詩歌・書画に造詣が深く、文人大名として各地の文化人と交流した。こうした文化的素地は、単なる武器としての刀剣ではなく、美術工芸品としての刀剣鑑賞・収集の文化を藩内に醸成した可能性が高い。豊後の刀鍛冶が製作した刀剣が陣屋の武家屋敷を飾り、久留島氏の家臣団が帯刀した風景は、小藩ながら精彩ある武家文化の縮図であった。 来島(くるしま)という地名自体が、湯築城の項で述べた伊予・河野氏の来島水軍に由来しており、久留島陣屋は中世から連続する日本刀と水軍武将の歴史の最終章を体現する史跡として、伊予・豊後を結ぶ刀剣文化の文脈の中に位置する。
見どころ
- 陣屋跡・武家屋敷跡(旧久留島氏庭園は国指定名勝) — 土塁・石垣・門跡が良好に保存された九州屈指の陣屋形式の遺構
- 玖珠町歴史資料館 — 来島水軍の歴史から豊後森藩の文化まで一体的に展示する地域歴史館
- 山中御殿の景観 — 九州山地の緑に囲まれた陣屋空間、「山中御殿」と呼ばれた静謐な武家の世界
- 久留島通嘉ゆかりの文化遺産 — 江戸中期の文人大名が残した詩歌・書画の伝統、藩の文化的精彩を示す
- 豊後森機関庫公園 — 近接する昭和の蒸気機関車庫(登録有形文化財)との組み合わせ観光コース
- 伐株山眺望 — 玖珠町独特のメサ地形「伐株山」を背景に陣屋跡を俯瞰する、大分・九州山地の絶景
※開館時間・入場料は変更される場合があります。訪問前に公式サイトをご確認ください。