※画像はイメージです。後藤祐乗
Gotō Yūjō
解説
後藤祐乗(ごとうゆうじょう、1440〜1512)は、室町時代中期から後期にかけて活躍した装剣金工師であり、後藤家(ごとうけ)の始祖として装剣金工史に燦然と名を刻む伝説的な名工である。後藤家は祐乗以来、代々にわたって室町幕府・豊臣家・徳川幕府の御用金工師として仕えた名門であり、「後藤十七代(ごとうじゅうしちだい)」と称される嫡流の系譜は日本の装剣金工の最高権威として江戸時代を通じて尊重された。
祐乗は将軍・足利義政(あしかがよしまさ)に仕えた金工師として知られており、銀閣寺(慈照寺)を中心とする東山文化(ひがしやまぶんか)の洗練された美意識と深く関わりながら刀装具の新様式を確立した。祐乗が創始した後藤家の様式「家彫(いえぼり)」は、吉祥文様(龍・牡丹・獅子・鶴亀・松竹梅など)を主題とした格調高い彫刻を赤銅(しゃくどう)地に施すものであり、金銀の色絵(いろえ)を組み合わせた豪奢な仕上がりが特徴的である。この様式は以後200年以上にわたって武家の正式な刀装具の基準となり、「後藤格(ごとうかく)」として刀装具界の最高権威として仰がれた。
技法的には、祐乗は赤銅(しゃくどう)という黒みがかった合金を主素材として確立した人物とされる。赤銅は銅に少量の金を加えた合金であり、化学処理(煮沸)によって深みのある黒紫色を呈する。この暗い素地の上に金・銀で色絵を施すことで、豊かな色彩対比と高貴な品格を兼ね備えた刀装具を生み出す技法は、後藤家の最大の発明のひとつとして後世に伝えられている。目貫(めぬき)・小柄(こづか)・笄(こうがい)の「三所物(みところもの)」の様式を確立したことも祐乗の功績として伝えられており、これらの形式は現代に至るまで刀装具の基本形として引き継がれている。
祐乗の真作は現存数が極めて少なく、その希少性から国宝・重要文化財に指定された作品も存在する。銘の「祐乗」という刻字は後世の偽銘が多く流通したことで知られており、真作の鑑定は刀装具研究の中でも最も慎重な分析を要する分野のひとつである。現在、祐乗の真作と伝えられる作品は徳川美術館・東京国立博物館・大阪市立美術館などに収蔵されており、日本の装剣金工芸術の源流として国内外の研究者から最高の評価を受けている。
代表作
- 祐乗銘 赤銅龍牡丹図鍔(国宝候補)
- 祐乗銘 赤銅獅子図三所物(徳川美術館蔵)
- 祐乗銘 赤銅鶴亀図小柄(重要文化財)