※画像はイメージです。長船長光
Osafune Nagamitsu
解説
長光(ながみつ)は鎌倉時代後期、備前国(現在の岡山県)に興った長船派の刀工で、同派の祖・光忠の子と伝えられる。正応二年(一二八九)銘の太刀をはじめ、永仁・正安・嘉元といった年号を切る在銘作が知られ、作刀期間はおよそ三十年に及ぶ。かつては「左近将監長光」銘を二代目とする説もあったが、近年は左近将監銘を含めて一代とみる見方が有力である。父光忠が大成した華やかな丁子乱れの作風を受け継ぎつつ、これを洗練させ、長船を備前刀の最盛期へと導いた中心的存在である。
作風は幅が広い。蛙子丁子(かわずこちょうじ)や重花丁子(じゅうかちょうじ)を交えた豪壮華麗な乱れ刃から、浅い湾れに長光独特のむっくりした互の目風の丁子を交えた穏やかな作、さらには直刃調のものまで焼く。地鉄は小板目肌がよく詰んで精美で、乱れ映りが鮮やかに立つのが大きな見どころである。帽子は横手の上でやや乱れて小丸に返る独特の形をなし、これは弟子たちにも共通することから「三作帽子」と呼ばれる。
代表作として名高いのが、国宝「大般若長光(だいはんにゃながみつ)」(東京国立博物館蔵)である。重花丁子を交えた絢爛たる刃文を焼いた傑作で、室町時代に銭六百貫という破格の代付がなされ、全六百巻からなる経典『大般若経』になぞらえてこの号が付けられた。足利義輝から三好長慶を経て織田信長、徳川家康へと渡った来歴でも知られる。ほかに、明智光秀の家老津田遠江守重久が所持したことに由来する国宝「津田遠江長光」(徳川美術館蔵)など、長光には国宝六点、重要文化財二十八点、重要美術品三十六点が指定されており、古刀期の刀工としては現存する在銘作が最も多い一人に数えられる。在銘作が豊富なことは、後世の鑑定において長船派の作風を判ずる確かな基準作としても重んじられてきた。
系譜の面でも長船嫡流の要に位置する。子の景光が三代目として家督を継いで嫡流を確立し、以後の長船一門の隆盛へとつながった。長光・真長・景光の三人は前述の三作帽子を共有することから「長船三作」と並び称される。日本刀工辞典の作位では最上位の「最上作」に位置づけられ、在銘の名物を数多く遺した点と相まって、長光は備前伝の頂点を体現する名工として今日も高く評価されている。
代表作
- 大般若長光(国宝)
- 津田遠江長光(国宝)