※画像はイメージです。籠手切正宗
Kotegiri Masamune
別名: 籠手切正宗・甲冑の籠手を断った正宗の刀
解説
刀の概要
籠手切正宗(こてぎりまさむね)は、岡崎正宗が鎌倉時代後期に鍛えた刀で、「籠手切(こてぎり)」の名はこの刀がかつて甲冑の籠手(こて、手首・前腕を守る部分)を断ったという伝承に由来する。刃長は約二尺二寸六分(約68cm)の刀で、正宗特有の相州伝の地鉄と刃文が展開する重要文化財指定の名品である。越前朝倉家・織田信長を経て加賀前田家に伝来し、現在は東京国立博物館に所蔵されている。
製法と特徴
籠手切正宗においては、板目に柾目が交じる複雑な地鉄に大粒の地沸が随所に現れ、刃文は互の目・尖り刃が混じる活発な乱れで沸が煌めくという、正宗の代名詞ともいえる相州伝の景色が凝縮されている。「籠手切」という名は、武具の中でも堅牢な部分である籠手を一刀で断つほどの斬れ味を持つとされたことを示しており、正宗の作品が工芸的な美だけでなく実用的な切れ味においても他の追随を許さない水準にあったことを証言している。
朝倉家から前田家へ
籠手切正宗は越前の名門朝倉氏に伝来した名刀として知られる。朝倉氏の滅亡(天正元年・1573年)後に織田信長の手に渡り、信長の家臣・大津伝十郎を経て、加賀百万石の前田利常の所蔵となった。
現在の所蔵
明治15年(1882年)に前田家から宮内省へ献上され、現在は東京国立博物館(東京都台東区)に所蔵されている。
逸話・伝説
## 籠手を断つ刃——名の由来の伝承 「籠手切(こてぎり)」という号の由来となった逸話は、この刀が戦場において敵の甲冑の籠手を一刀で断ち切ったというものである。籠手は鉄または革製の防具であり、それを断つためには並外れた刃の鋭さと鋼の質が必要である。正宗の刀が「斬れ味が神業の域にある」と称されてきた根拠の一つとして、この籠手切の伝承はしばしば引用される。実際に籠手を断ったかどうかよりも、正宗の刀の斬れ味に対する当時の人々の圧倒的な信頼感が、このような伝承を生み出したと考えられる。 ## 名物としての伝来 籠手切正宗は越前の朝倉氏に伝来したのち織田信長の所有となり、信長によって磨り上げられて家臣の大津伝十郎(長昌)に与えられたと伝わる。その後、佐野氏を経て加賀前田家(前田利常)の所蔵となり、明治期に皇室へ献上された。享保名物帳に記載される正宗の代表的名物の一つである。 ## 名刀の継承 籠手切正宗は現在、東京国立博物館に収蔵されており、武家社会を渡り歩いたのち皇室を経て国立博物館に伝えられたその来歴は、名刀の継承を現代に伝えている。刀を通して歴史の連続性を感じさせるこの保存のあり方は、日本の文化財保護における理想的な事例の一つといえる。