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※画像はイメージです。日本刀は美術品であると同時に、多くの場合は「中古品」として売買される。新作刀を刀匠から直接購入する場合は古物には当たらないが、一度でも個人や業者の手を経た刀剣を買い取り、あるいは他者へ転売する事業は、古物営業法上の「古物商」の許可対象となる。刀剣は同法が定める古物区分の中でも美術品類に含まれ、盗難品の流通や不正な換金を防ぐための厳格な取引記録義務が課されている。
インターネットを介した刀剣売買が広がるにつれ、この古物営業法の適用範囲も改めて注目されるようになった。対面での売買であれば、相手の運転免許証やマイナンバーカードを提示してもらい、その場で確認すれば済む。しかし刀剣ECのように売主・買主が顔を合わせないオンライン取引では、同法が定める非対面取引の確認手続を経なければならない。対面取引の常識をそのままオンラインに持ち込めない点が、この分野の実務を難しくしている。
古物営業法施行規則は、対面によらない取引で許容される本人確認の方法をいくつかの類型に限定している。主なものは次の3つである。
いずれの方法も、単に身分証の画像を送ってもらうだけでは足りない点が特徴である。画像送付によるオンライン完結型の確認、いわゆるeKYCを採用する事業者も増えているが、これも施行規則が定める要件——本人確認書類の厚みや特徴が分かる撮影、顔写真との照合など——を満たして初めて有効な確認手段として認められる。書類の種類を問わず、確認の記録を一定期間保存する義務も併せて課されている。
高額な美術品である日本刀は、盗難品が訳あり品として市場に紛れ込みやすい商材でもある。本人確認を形式的にしか行わない、あるいは省略した取引は、盗品の換金経路として悪用されるリスクを高めるだけでなく、事業者自身が営業許可の取消しや罰則の対象となりかねない。
刀剣専門店にとって本人確認は、単なる法令順守の手続きではなく、取引相手が真に正当な所有者であることを担保し、結果として買主が手にする一振りの来歴を守るための仕組みでもある。盗難刀剣が発見された際に取引記録から追跡できる体制が整っていることは、業界全体の信頼性を測る指標になる。近年は美術品や骨董の国際的な流通も増えており、来歴が追跡できない刀剣は海外市場でも敬遠される傾向が強まっている。
古物営業法が古物商に課す義務は、本人確認だけにとどまらない。取引のたびに、相手方の氏名・住所・職業・年齢、取引年月日、古物の特徴などを古物台帳に記載し、一定期間保存することも義務づけられている。これは単なる社内管理の話ではなく、警察が盗品の流通経路を捜査する際の重要な手がかりになる仕組みでもある。
刀剣は銘や姿、拵えの特徴によって個体を特定しやすい古物であり、台帳への記載が正確であればあるほど、盗難や不正流通が発覚した際の追跡は容易になる。オンライン取引では、取引記録がシステム上に自動的に残るという利点がある一方、記載内容が形式的な入力項目の羅列にとどまり、実際の本人確認プロセスと連動していないケースも起こりうる。本人確認の実施と台帳記載を一体の手続きとして設計することが、制度の実効性を保つ鍵になる。
刀剣のオンライン取引が拡大する中で、本人確認の実務は今後も精緻化が求められる分野だ。マイナンバーカードのICチップ読み取りによる確認や、公的個人認証サービスを活用した確認手法など、対面と同等以上の確実性を持つ非対面確認の選択肢は年々広がっている。
刀剣を購入する側から見れば、取引相手の古物商許可番号や本人確認体制を確認することは、安心して取引できる事業者を見分ける実務的な手がかりになる。古物営業法という一見地味な規制が、実は美術品としての日本刀の価値と来歴を守る土台になっている点は、意外と知られていない。オンラインで刀剣を探す際は、掲載されている古物商許可番号の有無を、信頼性を測る最初の目安にするとよいだろう。
日本刀×日本文化体験
観光スポットと刀剣文化をつなぐ多言語展開。