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※画像はイメージです。日本刀の茎(なかご)に切られた銘には、「越前守助広」や「陸奥守吉行」のように、名の前に「〇〇守」「〇〇掾」といった官名が付くものがあります。これが受領銘(ずりょうめい)です。もとは律令制のもとで地方の国を治めた国司の官名で、江戸時代の刀工はこの官名を名乗ることで、自分の作に格を添えました。
国司には長官の「守(かみ)」、次官の「介(すけ)」、三等官の「掾(じょう)」、四等官の「目(さかん)」があります。刀工の銘に見られるのは主に守と掾で、掾には大掾・少掾という区別もあります。なお、江戸時代の受領名は、その国を実際に統治する役目とは関係のない名誉的な称号でした。「陸奥守」を名乗った刀工が陸奥国を治めていたわけではありません。
受領銘の刀工は、慶長期以降のいわゆる新刀期に多く見られます。古刀期の刀工の銘は、国名や地名を冠したもの、あるいは個人名だけのものが中心でした。銘の形式そのものが、時代の手がかりになります。
受領銘は、次の順に読むと整理しやすくなります。
官名は国名に「守」「掾」が付いた形なので、日本の旧国名を知っていれば読めます。ただし、同じ官名を名乗る刀工は複数います。官名だけで刀工を特定することはできず、必ず刀工名と組み合わせて判断します。
たとえば大坂新刀の津田助広は「越前守助広」と銘を切ることで知られ、陸奥守吉行についても、当サイトの解説記事で作風と伝来をまとめています。個別の刀工の作風は、陸奥守吉行の解説や大坂新刀の解説を併せて読むと、銘と作風の結びつきが分かりやすくなります。
刀工がどのように受領名を得たのかについては、史料や解説によって説明に幅があります。広く語られているのは、朝廷の官位に関わる手続きが必要だったため、刀工の側は取り次ぎを頼み、京都の有力な鍛冶家が窓口の役割を担ったという見方です。伊賀守金道を名乗った京都の金道家が、その役割の中心にいた家として知られています。
ただし、手続きの細部や費用、時期による違いは、ここで断定できるほど確かな形では整理されていません。受領名を得ることが刀工にとって大きな名誉だったことは確かですが、制度の詳細には立ち入らず、銘を読む際の背景として押さえておくのがよいでしょう。
藩に召し抱えられた刀工の場合は、藩主の意向や藩の格式との関係も想像されますが、これも一律には言えません。藩と刀工の関係は、藩の刀工保護制度の解説で別の角度から整理しています。
同じ刀工でも、受領する前と後で銘が変わることがあります。たとえば、受領前は名だけを切り、受領後に官名を冠した銘に改めるといった形です。この変化を手がかりにすれば、同じ刀工の作品を、受領前の作と受領後の作に大まかに分けて考えられます。
さらに、受領名が途中で変わる刀工もいます。その場合、銘の書体や字の切り方、官名の違いが、制作の前後関係を推測する材料になります。作風の変化と銘の変化が重なるかどうかを見ると、鑑賞の面白さも増します。
ここで注意したいのは、受領銘があるから古い、新しいと単純には言えない点です。二代、三代と同じ名を受け継ぐ刀工もいるため、同名の別人の作である可能性を常に考える必要があります。世代の見分けについては、銘の切り方の解説である銘を切る技術の記事も参考になります。
名のある受領銘は、偽銘(ぎめい)の対象にもなりやすい銘です。銘だけを見て判断せず、次の点を合わせて確認します。
銘の真偽を見分ける基本は、銘の種類と鑑定の解説にまとめています。銘は作品の入口にすぎず、刀そのものの出来と切り離して評価することはできません。
オンラインで刀剣を見る場合、写真に写った茎の銘がまず情報源になります。受領銘のある刀であれば、官名と刀工名を上の手順で読み、鑑定書や登録証の記載と照らし合わせておくと、内容を理解しやすくなります。読み方に迷ったときは、出品ページの説明や、お問い合わせフォームからの連絡も選択肢になります。
受領銘は、江戸の刀工が自らの名に添えた官名という、歴史的な背景を持った銘です。読み方を知ると、一本の刀の茎に、時代の空気と刀工の立場が刻まれていることが見えてきます。