山田浅右衛門
Yamada Asaemon
江戸幕府「御様御用」を世襲し、刀剣鑑定書『懐宝剣尺』を著した山田家の名跡
解説
御様御用の世襲
山田浅右衛門は、江戸幕府において刀剣の試し斬りを行う役目「御様御用(おためしごよう)」を代々務めた山田家当主が名乗った名跡である。8代将軍・徳川吉宗の治世下、初代山田貞武からその役目を継いだ2代目・吉時以降、山田家がこの役目を実質的に相伝するようになった。
相伝の形
御様御用は世襲の役目とされたが、当主が実子に役目を譲ったのは二度のみで、多くの場合は門下で最も技量に優れた者が養子に迎えられ、後継者として選ばれた。
「首斬り浅右衛門」としての側面
山田家は刀の試し斬りに加え、死罪人の斬首(処刑)も担う役目であったことから、「首斬り浅右衛門」「人斬り浅右衛門」の通称でも知られた。
『懐宝剣尺』の編纂
寛政9年(1797年)、5代目山田浅右衛門は、剣術指南役・須藤五太夫の協力を得て、刀剣の斬れ味を実地の試し斬りに基づいて格付けした鑑定書『懐宝剣尺』を著した。ここで示された「業物(わざもの)」という格付けは、実際に人体や巻藁を斬った経験に裏打ちされたものであった。
「業物」の格付け
『懐宝剣尺』が示した格付けは、斬れ味の優れた順に「最上大業物」「大業物」「良業物」「業物」の段階に分けられており、これは実際に人体や巻藁を試し斬りしてきた山田家ならではの、実地経験に基づく分類であった。
刀剣鑑定への影響
実地の斬れ味という独自の視点に基づく山田家の格付けは、後世の刀剣鑑定・刀剣評価においてもたびたび参照され、日本刀の実用性を測る基準の一つとして今日まで語り継がれている。
後世評価
山田浅右衛門の名跡は、単なる処刑人としてだけでなく、実地の斬れ味という独自の視点から刀剣の価値を見極めた鑑定家の家系としても、日本刀の歴史に重要な足跡を残している。