※画像はイメージです。大河ドラマ 麒麟がくる
Kirin ga Kuru (NHK Taiga Drama, 2020–2021)
2020年1月19日〜2021年2月7日放映のNHK大河ドラマ第59作(脚本:池端俊策、主演:長谷川博己)。明智光秀の生涯を「なぜ光秀は信長を討ったのか」という謎を軸に描いた意欲作。時代考証は小和田哲男が担当。光秀ゆかりの刀剣・本能寺の変で焼失した名刀など、日本刀史の転換点を背景に持つ作品。
解説
作品概要
「麒麟がくる」は2020年1月19日から2021年2月7日まで放映されたNHK大河ドラマ第59作で、脚本は池端俊策、主演は長谷川博己(明智光秀役)。本作は「本能寺の変(1582年)」という日本史最大の謎の一つを軸に、明智光秀の生涯を前半生から丁寧に描いた意欲作である。斎藤道三役の本木雅弘、織田信長役の染谷将太、足利義輝役の向井理、徳川家康役の風間俊介など、多彩なキャストが脇を固めた。新型コロナウイルスの影響で撮影が中断したため、2021年2月まで放映が延長された。
明智光秀と刀——文武を兼ねた武将の剣
明智光秀(1528?〜1582年)は、戦国武将の中でも「文武両道の知識人武将」として特異な位置を占める。連歌師・文化人としての側面と、優れた軍事指揮官としての側面を併せ持ち、その刀への向き合い方も単なる「武の道具」を超えた精神性を持っていたと推察される。長谷川博己は本作に向け、殺陣シーンで「人を斬るシーン」に強いこだわりを持って臨んだことを語っており、光秀の「刀を振るうことへの葛藤」が作品全体のトーンを形成している。
光秀ゆかりの刀剣——史実の記録
明智光秀に関連する刀剣として、複数の史料に記録が残っている。 - **明智近景(号)**: 無銘の刀で、光秀の愛刀とされる。2019年に「明智光秀の愛刀」として注目を集めた。 - **光秀から細川忠興を経て秀吉へ**: 光秀が所持した脇差が細川忠興を通じて豊臣秀吉に渡ったとされ、太閤御物として刀絵図に所載される刀剣が香川県立ミュージアムに重要文化財として所蔵されている。 - **愛宕山奉納の刀**: 本能寺の変直前に光秀が愛宕山へ奉納した刀は、のちに秀吉が別の刀を納めて取り出し、青木一矩・加藤嘉明・丹羽長重へと伝わったとされる。
本能寺の変と刀剣史——「焼失した信長の名刀」
本能寺の変(1582年)は、日本の刀剣史にとっても重大な事件である。本能寺に集められた織田信長の刀剣コレクションの多くが、この火事で焼失または行方不明となったからである。信長が所蔵した「薬研藤四郎(やげんとうしろう)」「実休光忠(じっきゅうみつただ)」などの名刀は本能寺で焼失したとも、救出されたとも伝わる。京都の本能寺では現在も「焼失した信長の愛刀」を復元した展示が行われており、本能寺の変を描く「麒麟がくる」はこの刀剣史の転換点を物語の核に据えている。
戦国武将の刀と「本能寺の変」の刀剣的意義
本能寺の変は単なる政変ではなく、「天下人・信長が収集した刀剣コレクションの散逸」という刀剣文化史上の事件でもある。秀吉・家康は信長の刀剣コレクションを継承・分散させ、現在各地の博物館・神社が所蔵する「信長伝来の刀」の多くはこの変を経て各武将に渡ったものである。「麒麟がくる」は光秀の視点からこの歴史的瞬間を描くことで、刀剣文化の観点からも見逃せない物語を紡いでいる。
土岐・美濃と刀剣文化の背景
光秀の出身地は「土岐氏の末裔」説が有力であり、その出身地・美濃国(岐阜県)は「美濃伝(みのでん)」の刀剣産地として著名である。美濃伝は「関鍛冶(せきかじ)」を中心に、戦国時代に最も大量に実用刀を供給した刀剣産地であり、「関の孫六」などの名工を輩出した。光秀が美濃を拠点とした前半生は、この「美濃刀の文化圏」に育まれた武将像として理解することができる。
登場する実在の刀剣
明智近景(号・無銘)——光秀の愛刀
明智光秀の愛刀とされる「明智近景」は、2019年に「光秀の刀」として注目を集めた刀剣。無銘ながら「近景」という刀工の作と伝えられ、光秀が刀に込めた精神性を今に伝える遺品として研究されている。
薬研藤四郎(やげんとうしろう)——本能寺で失われた信長の名刀
藤四郎吉光(粟田口吉光)作の短刀で、織田信長が愛蔵した名品。本能寺の変で焼失したとも、難を逃れたとも伝わる。現在も「幻の名刀」として知られ、京都本能寺ではその復元品が展示されている。光秀が打った本能寺の変はこうした名刀の命運をも決した歴史的瞬間であった。
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