※画像はイメージです。ジョン・ウー作品
John Woo Films
香港映画監督・呉宇森(ジョン・ウー)の監督作品群。「男たちの挽歌(1986)」「ハードボイルド/新・男たちの挽歌(1992)」での「ガン=フー」スタイルと、「レッドクリフ(2008〜2009)」での三国時代の剣戟描写で、東アジア映画における武器アクションの美学を世界に普及させた。
解説
ジョン・ウー作品——東アジアの武器アクション美学と剣戟の詩学
呉宇森(ウー・ユイセン、英名John Woo、1946年生)は、香港映画黄金期を代表する映画監督であり、「スタイライズド・アクション(様式化されたアクション)」の美学——スローモーション・二挺拳銃・白い鳩・対称構図——で世界映画史に独自の位置を占める。代表作は「英雄本色(A Better Tomorrow、1986年)」「喋血双雄(The Killer、1989年)」「辣手神探(Hard Boiled、1992年)」(香港期)、「フェイス/オフ(Face/Off、1997年)」「M:I-2(ミッション:インポッシブル2、2000年)」(ハリウッド期)、「赤壁(Red Cliff、2008〜2009年)」(中国期)。
「男たちの挽歌(1986年)」と義侠の刀剣的精神性
「英雄本色(A Better Tomorrow)」は狄龍(ティ・ロン)・張國榮(レスリー・チャン)・周潤發(チョウ・ユンファ)が出演した香港ノワール映画であり、義兄弟の絆・義侠(ぎきょう)・裏切りと復讐という武侠(ぶきょう)映画の伝統的主題を現代香港の犯罪世界に移植した。本作で確立された「義のために命を賭ける男たち」の美学は、日本の任侠映画・時代劇の「義のために刀を抜く武士」という精神的主題と深く共鳴する。
「刀(日本刀)ではなく銃を使いながら、その精神的文法は武士の刀剣哲学に準じる」——ジョン・ウーの香港ノワール作品群は、この「武器が変わっても変わらない武士的精神性」の現代的表現として、日本の刀剣文化と交差する地点を持つ。
「赤壁(Red Cliff、2008〜2009年)」——三国時代の剣戟と武将描写
ジョン・ウーが中国映画への回帰として制作した「赤壁」は、三国時代の赤壁の戦い(208年)を題材とした歴史スペクタクル映画である。中国版は前後編合計約4時間48分(Part I: 146分、Part II: 142分)で、製作費は8000万ドルにのぼった。
本作には「剣(けん、直剣)」「刀(とう、湾刀・環首刀)」「弓(きゅう)」「槍(そう)」など三国時代の実際の武器が登場し、趙雲(ちょううん)・周瑜(しゅうゆ)・諸葛亮(しょかつりょう)などの武将の戦闘シーンが大規模に映像化されている。三国時代の中国剣(主に環首刀・直剣)のデザインと使用法は、日本刀の成立(平安時代後期、10〜11世紀)以前の東アジア刀剣文化の形態を体現しており、日本刀の歴史的前史を理解する文脈として機能する。
「ガン=フー」美学と剣戟の美的文法の継承
ジョン・ウーが確立した「ガン=フー(Gun-Fu)」——銃撃戦を武術・剣術の動作原理で演出するアクションスタイル——は、「武器が変わっても変わらない戦闘の美的文法」という概念を映像で体現している。「二挺拳銃の左右対称の動き」「静止した一瞬から爆発的に動く抜刀に相当する動作」「距離感・タイミング・身体全体の連動」——これらの要素は日本の剣術・居合道の動作原理と機能的に類似した美的構造を持ち、「銃という道具を通じて剣戟の文法を実現する」というジョン・ウーの映像スタイルの本質を示している。
映画研究者のデヴィッド・ボードウェル(David Bordwell)も、著書『Planet Hong Kong』(2000年)でジョン・ウーを含む香港アクション映画の演出を論じている。
登場する実在の刀剣
環首刀(かんしゅとう)——漢〜三国時代の中国の標準的な実戦用刀、「赤壁」の武将が帯刀する刀種
越王勾践剣に代表される春秋時代の青銅直剣——三国時代の剣(けん)のデザインの前身
本物の日本刀を見る
本物の日本刀を見る※本ページは日本刀文化の紹介を目的としており、各作品の著作権者とは関係ありません。