相続した日本刀を売却したときの税金——譲渡所得の扱いと確定申告の要否
最終更新: 2026-07-06
目次
相続した日本刀を売却したとき、利益の額によっては税金がかかることがあります。ここでは、個人が相続した日本刀を手放す場合の税金の基本を整理します。税額の計算や申告の要否は個別の事情によって変わるため、実際の申告は税理士にご確認ください。
日本刀を売った利益は「譲渡所得」
日本刀を売って得た利益は、原則として譲渡所得に当たります。土地・建物や株式のような分離課税ではなく、給与など他の所得と合算して累進税率で課税される総合課税です(国税庁タックスアンサーNo.3105、所得税法第33条)。
売値「30万円」がひとつの分かれ目
家具や衣服など生活に通常必要な動産を売った利益は非課税ですが、貴金属・宝石・書画・骨とう・美術工芸品などで、1個または1組の価額が30万円を超えるものは非課税から除かれ、課税対象になります(国税庁No.3105、所得税法施行令第25条)。
日本刀はこの「書画・骨とう・美術工芸品」に当たると考えられるため、1振り(または1組)の売値が30万円を超えれば課税、30万円以下なら原則非課税と整理できます。複数振りを売る場合は、1振りごとに30万円を判定します(合算はしません)。なお、価値ある収集刀が「生活に通常必要な動産」に当たるかについては見解が分かれる余地もあり、高額な刀は税理士へのご確認をおすすめします。
保有期間で変わる——短期と長期
課税対象になる場合、保有期間によって課税される割合が変わります(国税庁No.3152)。
- 保有5年以内(短期)——利益の全額が課税対象
- 保有5年超(長期)——利益の2分の1が課税対象
譲渡所得の計算と50万円の特別控除
譲渡所得は次の式で計算します(国税庁No.3152)。
> 譲渡所得 = 売った金額 −(取得費 + 譲渡費用)− 特別控除50万円
特別控除50万円は年間の総合課税の譲渡所得に対する控除で、利益がこの範囲に収まれば課税される所得は生じません。
相続した刀は「亡くなった方」の取得時期・取得費を引き継ぐ
相続で取得した資産を売る場合、被相続人(亡くなった方)が引き続き所有していたものとみなされます(所得税法第60条第1項、国税庁No.3270)。
つまり、5年超かどうかは被相続人が取得した時から数え、取得費も被相続人が取得したときの金額を使います。相続してすぐ売っても、被相続人が長く所有していれば「長期」になり得ます。なお、限定承認による相続では別の規定(みなし譲渡)が働くため、限定承認のケースは税理士へご確認ください。
買った値段が分からないとき——概算取得費
相続した刀は「亡くなった方がいくらで買ったか分からない」ことが少なくありません。取得費が不明なときは、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます(概算取得費。国税庁No.3258)。条文上の概算取得費は土地・建物等を対象としますが、日本刀など土地建物等以外の資産についても、国税庁の質疑応答事例により同様に5%を用いる取扱いが示されています。実額の取得費が分かる場合は、どちらが有利かも含め税理士へご確認ください。
相続税を納めたなら——取得費加算の特例
相続税を納めた財産を、相続税の申告期限の翌日以後3年以内(おおむね亡くなってから3年10か月以内)に売却した場合、納めた相続税額の一部を取得費に加算できる特例があります(国税庁No.3267、租税特別措置法第39条)。その刀そのものに相続税が課されていることが前提です。
確定申告は必要か
課税される譲渡益が出たときは確定申告が必要になりますが、必ず必要とは限りません。給与を1か所から受け年末調整が済んでいる会社員は、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下であれば、所得税の確定申告は原則不要です(国税庁No.1900)。20万円を超える場合は申告が必要です。
- この20万円のめやすは所得税のみの取扱いで、住民税(地方税)の申告は別途必要な場合があります。
- 年金受給者・自営業の方など、給与所得者以外は判定が異なります。
- なお、刀を反復・継続して売買している場合は、譲渡所得ではなく事業所得・雑所得として扱われることがあります(国税庁No.3105)。
個別の申告は税理士へ
以上は一般的な情報です。取得費が不明な場合、高額な刀、事業性の有無、相続税との関係など、実際の税額と申告は個別性が高く判断が分かれます。具体的な申告は税理士に、手続き面は所轄の税務署にご確認ください。 手放す前の手続き全般については相続した日本刀は売るべきか、保管すべきか、所有者変更届の基礎もあわせてご覧ください。
免責事項
本ページは税金に関する一般的な情報提供であり、税務・法的助言ではありません。税額や申告の要否は、取得費の有無・保有期間・他の所得・相続税との関係など個別の事情によって変わります。具体的な申告・判断は税理士に、手続き面は所轄の税務署または国税庁にご確認ください。
FAQ
相続した日本刀を売ると必ず税金がかかりますか?
必ずではありません。日本刀の売却益は譲渡所得ですが、1振り(または1組)の売値が30万円以下なら原則非課税です。30万円を超えると課税対象となり、そこから取得費・譲渡費用・特別控除50万円を差し引いた金額に課税されます。複数振りは1振りごとに30万円を判定します(国税庁No.3105・No.3152)。
相続した刀の保有期間は、いつから数えますか?
相続した資産は被相続人(亡くなった方)が引き続き所有していたものとみなされるため、保有期間は被相続人が取得した時から数えます。5年超なら長期で利益の2分の1が、5年以内なら短期で全額が課税対象です。取得費も被相続人の取得費を引き継ぎます(所得税法第60条第1項、国税庁No.3270)。
亡くなった人がいくらで買ったか分かりません。取得費はどうなりますか?
取得費が不明なときは、売った金額の5%相当額を取得費とすることができます(概算取得費)。条文上は土地・建物等が対象ですが、日本刀など土地建物等以外の資産についても国税庁の質疑応答事例により同様の取扱いが示されています。実額が分かる場合はどちらが有利かを含め税理士にご確認ください(国税庁No.3258)。
会社員です。刀を売ったら確定申告が必要ですか?
給与を1か所から受け年末調整が済んでいる会社員は、給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告は原則不要です。20万円を超えると申告が必要です。ただしこの20万円のめやすは所得税のみで、住民税の申告は別途必要な場合があります。正確な要否は税理士にご確認ください(国税庁No.1900)。
本ページは一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。最終的な確認は各国当局・専門家に行ってください。
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