※画像はイメージです。金地螺鈿毛抜形太刀
Kinji Raden Kenukigata Tachi
別名: 金地螺鈿毛抜形太刀・竹林の猫と雀の太刀・春日大社の国宝太刀
解説
春日大社に伝わる平安時代の飾太刀
金地螺鈿毛抜形太刀(きんじらでんけぬきがたたち)は、奈良県奈良市の春日大社に伝わる平安時代の毛抜形太刀。1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。柄に毛抜形の透かしを施す毛抜形太刀は、平安時代に衛府官人らが儀仗として佩用した様式で、実用ではなく奉納・儀礼のために製作されたと考えられている。現存する完存の平安時代の太刀は全国に3口のみとされ、本刀はその貴重な一口であり、後代の日本刀の祖形を伝える資料としても重視される。1930年(昭和5年)の春日大社第56次式年造替に際し、本殿第二殿より遷し出されたと伝わる。
鞘の螺鈿意匠
鞘は金沃懸地(きんいかけじ)の地に、螺鈿(貝殻の薄片)で竹林の中の猫と雀を表す意匠が施される。猫の目や斑、雀、竹の葉などには彩色したガラス材を象嵌し、細密な毛彫を加える。表・裏の鞘面には、猫が雀に忍び寄る「窺う」場面、追う場面、捕らえる場面が連続する三場面として描かれ、静止した文様ではなく時間の経過を伴う物語的構成を持つ点が特色とされる。この螺鈿細工の精緻さから、螺鈿太刀の中でも屈指の名品と評される。
金具と技法
柄や鞘口などの金具には、魚々子地(ななこじ、魚卵状の粒を連ねる地文技法)が用いられる。近年の調査では、これらの金具の多くがメッキではなくほぼ純度の高い金そのもので作られていることが確認されており、相当な力を持つ人物による奉納であったことがうかがえる。
指定と保存
本刀は春日大社国宝殿に収蔵され、通常は公開されない秘宝の一つとされる。文化財指定名称は「金地螺鈿毛抜形太刀」で、国(文部科学省)の国宝データベースに工芸品として登録されている。
逸話・伝説
鞘の螺鈿には、竹林で猫が雀を「窺う」「追う」「捕らえる」という三つの場面が連続して描かれており、静的な文様ではなく時間の推移を伴う物語として構成されている点が特異とされる。この愛らしい猫と雀の意匠から、近年は猫好きの間でも話題となり、春日大社国宝殿の企画展などで紹介されることがある。