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※画像はイメージです。日本刀の鞘(さや)には刀身以外にも三種類の「小道具」が組み込まれることがある。これらは単なる付属品でなく、刀装全体の芸術的統一を担う工芸品であり、独立した鑑賞・収集の対象としても高い市場価値を持つ。
小刀は鞘の側面に設けられた「小柄櫃(こづかびつ)」と呼ばれる溝に収める小型の刀子(とうす)形の刃物である。日常的な実用目的(紐を切る・食べ物を処理する等)に使われた護身用兼用の道具で、刃長は通常10cm前後。
小柄(こづか)は小刀の柄(つか)部分を指し、鞘から見えている部分が工芸品としてのデザインの核心となる。素材は赤銅・銀・金・鉄等の金属に高彫り・薄彫り・象嵌(ぞうがん)等の装飾が施され、職人の個性と技量が凝縮されている。
著名な小柄工としては、後藤一族(後藤家祖型)・横谷宗珉・奈良一刀彫り系の職人等が知られる。小柄はNBTHK審査の対象となる場合もあり、特別重要小道具として指定される優品が存在する。
笄(こうがい)は鞘の反対側に収める細長い金属製の棒状器具で、本来は整髪用(髷を整える・かゆい頭を掻く)道具として武士が携帯した。
特徴:
なお笄には整髪道具としての用途以外に、戦場で討ち取った首の耳に差し込み、武将名を記した木札を結んで身元を識別するために用いたという伝承もある。実用性と儀礼性を兼ね備えた道具であったことがうかがえる。
さらに、三所物に小柄と笄の予備を加えた五点一組を五所物(いつところもの)と呼ぶ。格式上は三所物の上位に位置し、同一職人・同一意匠で揃った五所物の現存作例は極めて希少である。
小柄・笄・目貫(めぬき:柄に埋め込む装飾金具)の三点セットを「三所物(みところもの)」と呼び、同一職人・同一意匠で揃った場合の希少性と市場価値は高い。後藤家初代〜後期の銘品は欧米の美術館コレクションにも多数収蔵されており、国際市場での競争力を持つ。
小柄・笄・目貫の三所物の歴史を語るうえで欠かせないのが後藤家だ。初代・後藤祐乗(ごとうゆうじょう、1440〜1512)は美濃国出身で、第8代将軍・足利義政に仕えて彫金を専業とすることを認められ、将軍家御用の金工一家としての地位を確立した。以後、後藤家は足利・織田・豊臣・徳川と時の権力者に17代にわたり仕え続け、約400年間にわたって三所物の頂点に君臨した。
後藤家の三所物の特徴は赤銅魚子地(しゃくどうななこじ)に高彫りという定型様式にある。赤銅(銅と金の合金で黒みを帯びた金属)の地に細かい粒状の魚子文様を敷き詰め、その上に動植物や故事人物を高彫りで表現する。この技法は「家彫(いえぼり)」と呼ばれ、将軍家・大名家への献上品に求められる最高格式の小道具として機能した。
横谷宗珉と並んで「奈良三作(ならさんさく)」と称される金工家も、江戸中期の町彫を牽引した名手として知られる。杉浦乗意(のりおき)・奈良利寿(としひさ)・土屋安親(やすちか)の三名がその代表で、写実的な動植物表現や精緻な毛彫りによって独自の作風を確立した。後藤家の定型を離れ、自由な構図と多彩な技法で小道具の表現領域を広げた点で、横谷宗珉と双璧をなす。
後藤家が「家彫」として格式を守り続けたのに対し、元禄年間に新しい流れを生んだのが横谷宗珉(よこやそうみん、1670〜1733)だ。後藤派で修業を積んだ宗珉は元禄3年(1690年)頃に独立し、題材・材質・構図の制約を取り払った自由な「町彫(まちぼり)」を創始した。透かし彫り・布目象嵌・片切彫りなど多彩な技法を駆使し、武家だけでなく裕福な町人層にも刀装小道具の美を広めた。宗珉の登場は、後藤家中心の小道具世界に競争と多様性をもたらした画期となっている。
刀の鞘に小柄と笄の両方を収める拵えを両櫃拵え(もろびつごしらえ)と呼ぶ。刀身のある側(表)に小柄、反対側(裏)に笄を収める溝(小柄櫃・笄櫃)が設けられ、鞘を手に持つと外側から柄の金工装飾が見える構造となっている。小柄・笄の意匠と鍔・目貫の意匠を揃えた三所物(または二所物)は、統一された美的世界を持つ拵えの象徴として最も高い評価を受ける。
三所物は単品でも国際的な美術市場で取引され、後藤家歴代の優品は欧米の主要美術館(メトロポリタン美術館・ヴィクトリア&アルバート博物館等)のコレクションにも収蔵されている。TOUKENZAでは個別の小柄・笄・目貫のほか、三所物として揃ったセット品も掲載対象となっており、来歴・保存状態・保存刀剣審査(NBTHK審査)の有無が市場価格に大きく影響する。
小柄・笄を鑑賞する際に注目すべき主要な要素を整理しておく。
素材の確認: 赤銅・銀地・金地・鉄地のいずれかが地金として使われているかを確認する。後藤家系の作は赤銅魚子地が基本。四分一(しぶいち=銅と銀の合金)や素銅(すあか=純度の高い銅)を用いた作も多い。
彫刻技法の識別: 高彫り(地から浮き上がった立体彫刻)・薄彫り(浅浮き彫り)・毛彫り(線刻)・象嵌(金・銀・赤銅を嵌め込む)などの技法がある。後藤家の高彫りは腐食せず経年で深みを増すのが特徴とされる。
銘の確認: 後藤家は初代祐乗以来、作品に銘を入れる慣例があった。裏面または柄頭部分に刻まれた「祐乗」「宗乗」等の銘は真贋鑑定の核心となる。横谷宗珉の作には「宗珉」銘が多く残るが、後世の写しも多いため審査結果の確認が重要だ。
日本刀×日本文化体験
観光スポットと刀剣文化をつなぐ多言語展開。