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※画像はイメージです。鐔(つば)の世界を理解するうえで、まず押さえておきたいのが素材による大きな分類です。鐔は、鉄地を用いた「鉄鐔」と、赤銅(しゃくどう)や真鍮(しんちゅう)などの軟質金属を用いた「金工鐔(きんこうつば)」に大別され、それぞれ異なる技法と美意識のもとに発展してきました。
鉄鐔は、鉄地を鍛え、透かしや象嵌(ぞうがん)、彫りなどを施したものです。鉄ならではの硬質で重厚な質感が魅力で、地鉄の色合いや肌を意味する「鉄味(てつあじ)」が鑑賞の中心となります。武家社会では実用と精神性を重んじる気風から、簡素で骨太な鉄鐔が広く好まれました。透かし鐔の多くもこの鉄鐔に含まれます。鉄味は鍛えの良し悪しや経年の保護状態によって変化し、長年大切に扱われた鐔は落ち着いた色艶を帯びます。
一方の金工鐔は、赤銅・真鍮・四分一(しぶいち)といった軟質の合金を地とし、高彫り(たかぼり)や色絵(いろえ)、象嵌などの華やかな装飾を施したものです。軟質金属は加工がしやすく、立体的で精緻な表現が可能なため、絵画的で豪華な意匠が発達しました。江戸時代に太平の世が続くと、刀装は実用の道具から美術工芸品としての性格を強め、金工鐔は大名や上級武士の好みを反映して大きく花開きました。
金工鐔を理解するうえで欠かせないのが「色金(いろがね)」という考え方です。赤銅は金を少量含む銅合金で、煮色(にいろ)と呼ばれる薬品処理によって深い黒紫色に発色します。四分一は銀を含み、灰色がかった上品な色合いを示します。こうした色金を組み合わせ、金・銀の象嵌を加えることで、軟質金属の鐔は絵のような豊かな色彩表現を実現しました。
室町から戦国の世では、鐔は何よりもまず手を守る実用の具であり、頑健な鉄鐔が主流でした。江戸時代に入り武士の世が安定すると、登城や儀礼の場にふさわしい装いとして刀装の意匠性が重視されるようになり、金工鐔の需要が高まります。一方で鉄鐔の伝統も絶えることなく、簡素な造形美を尊ぶ気風のなかで磨かれ続けました。素材の二大潮流は、こうした時代の変化と武家の美意識の両方を映し出す鏡でもあるのです。
鑑賞や購入検討の際に役立つ基本用語を押さえておきましょう。
鉄鐔と金工鐔は、求められる鑑賞の視点が異なります。鉄鐔ではまず鉄味と造形の骨格、透かしや象嵌の技を見ます。金工鐔では地金の発色、彫りの立体感、色絵や象嵌の精緻さ、そして題材の表現力を味わいます。どちらが優れているという優劣ではなく、それぞれが異なる美意識のもとに極められた工芸であると理解することが、鐔鑑賞を深める第一歩となります。
鐔の鑑賞眼は、数を流し見るよりも、一枚を時間をかけて見ることで育ちます。表と裏で意匠がどう連続しているか、櫃孔や耳の処理にどんな神経が通っているか——手のひらに収まる大きさの中に、確認すべき点は驚くほど多くあります。鉄味や色金の発色は照明によって表情を変えるため、可能であれば角度や光源を変えて眺めてみてください。刀と鐔は本来一体で楽しむものですから、刀剣を検討する際にも、付属する拵えの鐔が鉄か色金か、意匠が刀身の時代や雰囲気と調和しているかに目を配ると、選ぶ楽しみが一段と増します。
TOUKENZA では出品刀剣とともにその刀装の魅力もオンラインの一覧でご紹介しています。鉄鐔・金工鐔の作風の違いを知ることで、一振りの刀の見方がさらに広がります。ご関心のある作については、お問い合わせフォームよりお気軽にお寄せください。